鍼灸師と超音波画像診断(エコー)

みなさんこんにちは!
東洋医学を科学するBody-Remakerスタッフ

布野 聡一朗です。

当院は「東洋医学を科学する」をモチーフに

エビデンスが不明瞭な事柄について、一般的な治療院よりも深掘りしてお届けすることを目標に執筆しております!

この記事では、以下の三点について学ぶことができます。

①自分の触覚ってどこまで信用して良いの

②徒手検査+エコーで高い正確性

③それでも手で触れることの意味

の三本です。

それでは行ってみましょう!

目次

①自分の触覚はどの程度信頼を置けるのか?

実は概して、我々の五感は非常に曖昧なものです。認識の実に90%以上を担う視覚さえも、簡単に錯覚を起こすことは今や広く知られています。

まして、触覚というと、どうでしょうか…

心もとない気持ちになってきませんか?

例えば、人差指と中指を交差させて、一本の鉛筆にそっと触れると、鉛筆が2つあるように感じるというような実験があります。

大変ポピュラーなので、テレビなどで見たことありませんか?

あれも触覚の錯覚の一つで、錯触といいます。

この錯触、実は古代ギリシアの哲学者であるアリストテレスによる報告が存在します。

そのような昔から、触覚の不確かなことは知られていたのですね。

世界の知覚は,身体に備わっている五感それぞれの受容器からの情報のみから生じます。

当然ながら,それぞれの感覚受容器には生理的な限界があり,外界の情報全てを取り入れているわけではありません。

更に,情報を処理する脳にも限界がありますよね。

それら生物的な条件によって情報の取捨選択や前提条件の設定,処理遅延等が起こっています。

ですから、うっかり自分たちはありのままの世界を認知しているとついつい思いがちなのですが、

最終的に我々が感じている世界は実際とかなり異なっています。

このことは忘れがちなのですが、大事な認識です。

思い込みで判断していないか。

Aという原因だと思っていることが、実はBではないか?

特に身体という自然を相手にする医学では、常にここに立ち帰るべきスタートラインだと言えます。

② 徒手検査+エコーで高い正確性

超音波診断装置(以下、エコー)を手技療法や運動療法の評価や効果検証などに用い施術を行うことを、RUSI(Rehabilitative ultrasound imagingの略)と云います。

そもそも我々セラピストはドクターと異なり「器質的な」組織損傷の診断ができませんので、セラピスト自身が例えばレントゲンやCT上での変化を確認しながら運動療法や治療を行うことができませんでした。

必然的に、そのレベルの組織の変化を起こす手技を困難にします。

しかし、エクササイズ課題中の評価は可能です。そして、エコーは骨折の有無など、運動器の器質的変化を判断するのみでなく、リアルタイムで患部を動かしながらの動的観察が可能です。

言い換えると、エコーによって機能的な異常の評価や治療を行うことができるということです。

コメディカルは疾患原因の特定や、診断はやはりできませんが

エコーは関節運動を伴う動的評価(しかも治療患者のフィードバックを得ながらの)が可能であり、その情報は即時セラピストの治療的介入への応用が可能です。

例えば、ある特定の場所を圧迫して痛みが生じる時、

実際にどの組織が圧迫または牽引されて痛みが生じているか。

ドローインなどの運動課題中に時に腹横筋が、必要分だけ収縮できているかなどです。

これは単にセラピストができることが増えるというだけでなく、精度の高い安全度の高い医療に直結します。

例えば、セラピストがケアをするときに必要なのは第一に正しい診断や状態の判断がベースにあることですが、どのようなテストもエラーは起きるし、完璧なものはありません。

以下の図をご覧ください。

少し解説しましょう。
感度・得意度というと、コロナ流行の際に少し勉強した方もいらっしゃるかもしれませんが、上図は徒手による検査法の正確性を表した図で、感度・特異度はその検知力を二つの側面で計る概念です。そして、「感度」は、病気の人を検出する力を示し、「特異度」は、病気でない人を検出する力を示すものになります。
 両方の値が高いほど良い検査方法とされます。
以上の図ではSensitivity=感度、Specificity=特異度を表しています。
次に以下では、徒手による検査とエコー画像診断を併用する場合の図です。

+USとはエコーのことですが、明らかにこの両者の数値が上がっていることが確認できるでしょう。

医療が高度化、専門化する中、医療連携の必要性は明らかに高まっていますが、コメディカル・セラピストが直接細やかで、安全なケアを行うことは益々求められています。

それは鍼灸師が医療連携の中で活躍する場合も例外ではありません。

③ それでも手で触れることの意味

言い換えると、エコーによって機能的な異常の評価や治療を行うことができるということです。

器質的な・静的な評価(診断)のできないコメディカルにとって

運動器の器質的変化を判断するのみでなく、リアルタイムで患部を動かしながらの動的観察を可能にするエコーは、セラピストに翼を与えるものだということを確認しました。

例えば、伝統的な鍼灸の腹診(お腹の診断法)では、腹部のざらざら、コリコリ、ニョロニョロなど、微妙な触感を指は触り分けるのですが、エコーには読み取れない腹部の異常を見つけることができます。

エコーをはじめとする、画像診断の進歩は、理学療法領域において問題が筋骨格神経といった、マクロ解剖のレベルではなく、ミクロの組織レベルで起きていることが明らかにしましたが、それによって、かえって人間の触覚の精度の高さに注目が集まっています。

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